2024年の夏にアウシュビッツ・ビルケナウに行ってきました。
もともと、フランスでホロコーストに関係するテーマで修士課程をしていた私はずっといきたいと思っていました。
ちょうどタイミングが合いアウシュビッツにいけることになったので行くことにしました。
この記事では、アウシュビッツビルケナウにツアーで参加した時に実際に撮った写真とともに、ツアーの様子、筆者がどのように感じたかを紹介していきます。
アウシュビッツ・ビルケナウについて
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(アウシュヴィッツ ビルケナウ きょうせいしゅうようじょ、ドイツ語: Das Konzentrationslager Auschwitz-Birkenau、ポーランド語: Obóz Koncentracyjny Auschwitz-Birkenau)は、ナチス・ドイツが第二次世界大戦中に国家を挙げて推進した人種差別による絶滅政策(ホロコースト)および強制労働により、最大級の犠牲者を出した強制収容所である。収容者の90%がユダヤ人(アシュケナジム)であった。
ウィキペディアより
アウシュビッツ・ビルケナウへのアクセス
- クラクフ(ポーランドの都市)からバスツアーに参加する
- クラクフから最寄りのオシフィエンチムに電車移動、のち徒歩で30分
英語やフランス語、ドイツ語などでクラクフからバスツアーが出ています。
電車の時間を気にしなくてもいいこと、往復が楽なことがメリットです。
日本語ツアーをつける場合は、クラクフからバスは出ていないません。
電車で自力でアウシュビッツビルケナウまで行くことになります。
午前中のアウシュビッツ・ビルケナウのツアーに参加
もともと日本語のツアーをつけたかったのですが、夏休みど真ん中の時期に行ったため、日本語ツアーの定員がすでに埋まっていました。
ラッキーなことに、フランス語のツアーなら空きがあったので、一週間ほど前に予約。
アウシュビッツ・ビルケナウをフランス語のガイドとともに4時間過ごすツアーで25ユーロほどでした。
アウシュビッツまでは、クラクフから電車で約1時間
ご存知の方も多いかもしれませんが、アウシュビッツはポーランドにあります。
ポーランドのクラクフいう都市から電車で1時間ほど行った小さなまち、「オシフィエチム(アウシュビッツのポーランド語表記)」という駅でおります。
クラクフ中央駅は、さまざまな方面に向かう電車が走っていて、常に人混みでした。
年季が入った電車で1時間揺られることになります。
化粧室はありましたが、飲み物、食べ物の車内販売はなかったので、あらかじめ何か買っておいた方がいいかもしれません。
アウシュビッツ・ビルケナウの最寄駅、オシフィエチムに到着。
クラクフに戻る電車も1時間に1本ほどしかないため、あらかじめ時刻表を確認する必要があります。
駅を出てすぐに、アウシュビッツ・ビルケナウの案内看板があります。
もともと小さい街ですし、この地域に来る人のほとんどはアウシュビッツ・ビルケナウ目的だろうなと感じます。
街自体、ヨーロッパによくある小さな静かな街というような雰囲気で、過去の惨状を全く感じません。
ツアー前半・アウシュビッツ
まずは、アウシュビッツの方からツアーがスタートします。
近代的な建物からツアーが始まる
アウシュビッツに訪問するには入場ゲートを潜る必要があります。
かなり近代的な雰囲気のゲートでコンクリートに目隠しされている状態で、収容所に入っていきます。
ゲートの中には、収容所の犠牲者の名前が延々と朗読されていました。ツアーガイドの方に、ゲート内は沈黙を守り、名前に耳を澄めせるように助言されました。
ゲートを挟むことで、外の世界と収容所の世界を心理的に隔て、訪問者が収容所に入るための心理的な準備をさせているように感じました。
有名なゲートは、意外と小さい
アウシュビッツの収容所に入ると、すぐに有名なゲートが見えてきます。多くの人が写真を撮っていました。
現在ではゲートは常に開放されていますが、収容所稼働当時はゲートによって人間を閉じ込めていたと思うと、重い気持ちになります。
収容所を巡りながら、ガイドさんが、ゲートの意味、建物の役割を解説してくれました。
解説の特徴として、事実をただ淡々と語り、判断は来場者に任せるというスタイルをとっていました。
建物を巡りながら、アウシュビッツの歴史に触れる
建物の多くが、回収、修理中でした。
普通の建物の回収とは異なり、その場所にある「モノ」に与えられる意味が大きいので、全ての作業に慎重な判断と調査が必要であると感じます。
収容所の建物の中には、建物自体を写真、ものを展示する展示室のように使っている場所もありました。
場所によっては、写真を撮ることができない場所もあるので注意が必要です。
写真が撮れない場所は、犠牲者の毛髪と毛髪で作られた布などが展示されていました。
展示されているものを見るだけで、言葉で表現することができない気持ちになりました。
監視塔や電気柵のようなものも残っており、収容所からの脱走がいかに困難なものであったかが容易に想像できます。
また、処刑場なども間近で見ることができ、ホロコースト(ショア)から80年近く経った今でも当時の様子が想像できるほど、強い痕跡が残っています。
ツアーの最後に、ガス室の中に入ることができる
アウシュビッツのツアーの最後に、有名なガス室に入ることができます。
驚くほど重い空気が流れていました。
写真を撮ることは禁止されていないのですが、私は写真を撮ることができず、写真を撮りたいという気持ちもなくなってしまいました。それほどに、場所の持つ記憶の力が大きいと感じました・。
ツアー後半・ビルケナウ
ツアーの途中に休憩を挟んで、ビルケナウに向かいます。
ビルケナウの有名な建物は遠くからも見ることができる
この建物は写真で見たことがある人も多いのでは。
訪問者はこの建物の真ん中の穴から、実際に収容者を運んできた鉄道が走っていた門から中に入ることができます。
ビルケナウは当時の収監者の生活がイメージしやすい
ビルケナウに残されている建物の中には、当時の収容者が使っていた寝床が残っており、当時の生活が容易にわかります。
家族と話され、強制的に連れてこられた人たちが、この空間に押し込まれどのような生活をしていたのか、想像させられます。
アウシュビッツとビルケナウの対比が印象的
アウシュビッツとは対照的に、ビルケナウでは建物のほとんどが壊されていて、「収容所」というような雰囲気はあまり受けません。
どちらかというと、遺跡に近いような印象を受けます。
しかし、この遺跡に近い状態は、本物の時間ととのも風化してできた遺跡とは異なり、ナチスが収容所を放棄するときに自ら証拠をなくすために破壊したものです。
この場所には、人類の近代の歴史の中でも最も残虐な行為が行われていた歴史があるのにも関わらず、その歴史を伝えるモノが存在しないもどかしさを感じます。
アウシュビッツに行って感じたこと
写真は撮れるけど、気持ちは【撮れない】
まず、アウシュビッツ・ビルケナウに行って、自分自身に驚いたのが、写真を撮ることに自分の中に強い抵抗を感じたことです。
そもそも、場所自体が暗い場所であり、写真を撮りたくない気持ちにさせたのかもしれません。
しかし、それと同時に、「私が写真を今ここで撮ることは、当時の惨状を知ることに近づく手段にはなり得ない」という感覚から、写真を撮れませんでした。
写真とは一瞬で現実を切り取り、半永久的に自分たちのものにする力があります。
しかし、アウシュビッツ・ビルケナウでは、写真を撮ったとしても、「今私がここで感じていること」をどう頑張っても再現できないという感覚にならざるを得なかったです。
ディディユベルマンの表象可能性に関係するかもしれませんが、少なくとも、私は亡くなった故人への敬意に加えて、写真というメディアの限界を感じ、写真を撮ることができませんでした。
ガイドも展示も、起きたことを【客観的】に展示・紹介している
展示の特徴として、ガイドも展示も起きたことをとても客観的に紹介していることに気がつきました。
収容者の生活、ホロコースト(ショア)の経緯などを事細かに説明をしてくれます。
しかし、「惨劇を繰り返さない」、「過去を現在の教訓にする」というようなことは一切言及されませんでした。
とにかく、静かに当時の様子を語るという傾向が見受けられました。
このような客観的な説明のおかげで、私は収容者に思いを寄せるとともに、「自分がナチス側だったら、どう感じていただろうか」という考えを同時に持つことができました。
客観的で「こう捉えてほしい」という意思を感じないからこそ、おとづれている人は、収容者に対して共感するとともに、ナチスに対して「当時同じ立場だったら私はどんなことをするだろうか」という考えにも導かれます。
現代でも同じことは繰り返されているではないか、同時のことを「悲劇」というが、現在その悲劇は繰り返されていないのだろうか。
そう思わされます。
これからアウシュビッツに行く人へのアドバイス
最後に、これからアウシュビッツ・ビルケナウに行こうと考えている方のために、少しだけアドバイスを紹介します。
ガイドはつけた方がいい
ガイドはつけた方がいいです。
ガイドなしでもアウシュビッツ・ビルケナウには行くことができるのですが、体験できることが大きく異なると思います。
実際にどんなことがあったのか、ガイドさんから聞くことができ、経験が深まります。
また、ガイドさんに質問もできるので、自分から積極的にアウシュビッツ・ビルケナウについて知ることができます。
英語・日本語のツアーは比較的早めに予約が埋まってしまうので、早めにコンタクトを取るようにしましょう。
他の言語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、ポーランド語は比較的ギリギリまで空いているので、予約について心配はないと思います。
予習をしておいた方が、深く理解することができる
アウシュビッツ・ビルケナウにおとづれるだけでも、収容所の様子をはじめとしたホロコースト(ショア)を理解することができます。
しかしもっと深く理解するためには、当時の世界情勢の様子、全体主義についてというような歴史的な背景から、現代のアウシュビッツの立ち位置、文学、哲学がどう反応しているのか、というような背景知識があるともっと深く楽しめると思います。
最後に、アウシュビッツ・ビルケナウに行く前にお勧めする書籍を紹介します。