こんにちは。バゲと申します。
2022年の秋から2024年の夏まで、フランスで文系の大学院生をしています。
フランスの修士といっても自分の専攻するコースにより、修士論文を書く必要があったり、学外の研修(スタージュ)と関連レポートだけでも良かったり、学校により修士課程の終わらせ方はそれぞれです。
私の専攻しているリヨン第二大学の美術史の修士課程では、修士号を取得するために修士論文を書く必要がありました。
この記事では、フランスの大学院に興味があるという人向けに、フランスでの論文執筆の様子やフランスのゼミ制度などについて、共有していこうと思います。
※この記事は、私の経験に基づいて書かれています。フランスの中でも、大学、専門の範囲などで、システムが変わる可能性があるので、参考までにしてください。
私の大学は専門ごとのゼミがなく、一人で論文を書く。
私は日本の大学で卒業論文、フランスの大学で修士論文を書きました。
正確な比較をすることはできないですが、それぞれの学部、修士での論文の執筆のイメージはこんな感じでした。
- 学部3年生からゼミに入り、担当教授の授業を週に一回受ける
- 学部3年生は、卒論の大まかなテーマを決める
- 学部4年生からはゼミの授業で進捗報告と、学生同士で校正しあう
- 修士一年目入学直後に、担当教授を自分で決める
- 修士課程の授業の一環に、論文の執筆の授業がある
- 一年に数回、担当教授とオンライン面談をして進捗の相談をする
- 最終提出の時期は、自分一人ですべて校正を行う
指導教授は、自分の論文のテーマごとに個人で決める
日本の大学でのゼミ、論文執筆との一番の違いは、自分の書きたい論文のテーマごとに、学生自身が担当教授一人一人にコンタクトを取る必要があるということです。
例えば、建築系の研究をしたい場合は、建築を専門にする教授に担当教授になってもらいにお願いしますし、現代の作品をテーマに論文を書きたい場合は現代美術を専門にしている教授にお願いしに行きます。
自分の研究したいテーマと、教授の専門が合致しているのか、教授の担当する学生数に余裕があるのかなどを鑑みて、大丈夫だったら晴れて担当教授が決定するというような具合です。
担当教授へのお願いは、修士課程が始まった直後から始まります。
入学してすぐに自分のテーマに沿った教授を探してお願いする必要があるため、修士課程に登録した時にはもう「自分の研究テーマ」と「各教授の専門」を把握していく必要があります。
修士課程に入った時には、研究するテーマを事細かく決めなければいけないのは、日本もフランスも一緒だね。
論文の書き方・調べ方は、全体の授業で行われる
日本の大学の卒業論文の書き方の説明は、ゼミの単位で担当教授に教わりました。
しかし、フランスの大学では、論文、研究のための授業が専門のコースの「授業」として設定されていました。
各学生ごとに時代、地域、研究の方法が異なっていても、他の学生と一緒に文献の収集方法、引用の行い方、アーカイブの使い方などを勉強しました。
私の大学の場合は「Formation à la recheche」という授業でした。
文献の探し方だけではなく、電子アーカイブの使い方、研究に使えるサービス(ZOTEROなど)の使い方も教えてくれました。
私の場合、フランス式の引用の仕方、参考文献の表記の仕方を知らなかったので、研究の仕方を教える授業はとても役に立ちました。
論文指導は担当教授と一対一で指導される
一度担当教授が決まったら、あとは学生と一対一の指導が行われます。
私の場合は、すべてオンラインの面談で各1時間ずつ先生と相談することができました。修士一年目の冬と春に2回、修士2年目の冬と春に2回の合計4回、合計4時間の面談を行いました。
また、修士論文の執筆以外に、自分の担当教授の授業を普通にとっていたので、授業終わりなどに軽く質問をするということもありました。
同じ担当教授の指導を受けていても、学生同士の横のつながりはほとんどないよ。
私の場合は、学生たちが自ら連絡し合って2回くらい、一緒にバーに行ったくらいだね。
フランスの修士課程をする人へのアドバイス【論文編】
入学前に論文のテーマを決めておく
日本で修士課程をする場合でも同様ですが、フランスの修士課程も入学前に自分の修士のテーマを明確に決めておく必要があります。
自分が修士課程中にどんな研究をしたいか、ということを明確にけめておくと、担当教授選びや、文献の収集も早く進めることができます。
フランス人の同級生で修論のテーマを決めずに入ってきてしまい、担当教授を決定するのに苦労していた子もいました。
すごく具体的に隅々まで決めておく必要はないかもでしれませんが、「年代」「地域」「テーマ」などは最低限決めておくようにしましょう。
日本人の場合、研究を日本に関連させると、文献収集、研究が、かなり楽になります。
私の場合、とあるフランス人の現代アーティストについての研究をしたかったのですが、担当教授との相談の上、そのフランス人現代アーティストの日本での活躍などをテーマにした論文になりました。
出願する時にコースの教授たちの専門を把握しておく
そもそも、修士課程の出願段階で、ある程度研究のテーマが決まっているなら、その出願先の大学の教授群の専門を調べておきましょう。
ある程度大きい大学なら、いろいろな専門の教授がいるかもしれませんが、地方都市の大学だと、自分の研究のテーマを扱える担当教授がいない可能性もあります。
担当教授がいない場合は、自分の研究のテーマを少し教授の専門に寄せたものにすることで解決することができますが、本来望んだ研究では無くなってしまうかもしれません。
研究に関連する日本語の書籍をフランスに持ってくる
私が一番後悔しているのは、この書籍問題です。
前述の通り、私は日本を研究に絡めて行いました。
しかし、日本に絡めた研究をするには、日本語の書籍を使う必要があり、その書籍を日本からフランスにおく必要がありました。
自分の場合は研究対象の日本での展覧会カタログや、関係者の日本語の出版物を日本から取り寄せました。
しかし日本から本を取り寄せるとなると、重さが嵩み国際郵便の費用が高くなることに加えて、荷物が来るかどうかわからないという状況が生まれます。
あらかじめ、使うことが予測される本は持ってきた方が、後々便利です。
以上、フランスと日本の論文執筆に関わる比較でした。
これからフランスで留学をするという人の手助けになったらいいなと思っています。
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