修士1年目の前期終了!フランス大学院で受講した授業はこんな感じ【文系大学院生】

こんにちは、バゲちゃんです。

フランスのリヨンで美術史という学問の修士課程をしています。リヨンには2022年の秋に到着して、2024年の夏に修士課程を修了する予定です。(うまくいけば)

フランスで修士課程を始めた当初は、「フランス語がわからない」「友達ができない」「そもそも授業がわからない」と言った不安ばかり。

ですが、2023年の冬に行われた試験を持って修士課程1年目の前期を無事に乗り越えれました。

他の学生の支えに支えられ、自分の工夫をこらし、ちょっとしたズル(後述)も使いながら、乗り切ったワタシえらい!!

この記事では、実際に今学期に私が受講した授業を振り返りながら、フランスの大学の授業のスタイル、システムなどを振り返っていきたいと思います。

フランス留学に興味がある人、海外の大学院に進学してみたいと考えている人、美術史に興味がある人はぜひ最後まで読んでみてください。

この記事は、私が修士課程をしている「美術史」という学問を中心に扱っています。分野によって授業の数は上下するので注意が必要です。

修士1年目、日本人文系フランス大学院生が履修した授業。

私が修士1年目で履修した授業は、全部で8個日本の文系修士の学生が履修する授業数とあまり違いはないのかな。

授業は日本で言うところの、必修科目、選択必修科目のような科目に分けられています。

自由に選択することができる科目もあれば、大学に登録した時点で絶対に納めなくてはいけない単位もあります。

私が履修した授業
  • 基礎科目:「視覚文化学」、「現代美術史」、「現代建築史」、「現代写真史」
  • 理論科目:「研究理論」
  • 横断科目:「デジタル技術論」、「英語」
  • 職業科目:「個別指導」

フランスの大学院は、一般的な学問理論を教える授業に加えて、分野を横断した知識を身に付けさせる「横断科目」や、将来的に就職することを見据えた教育科目の「職業科目」という授業があることが特徴的だと思います。

ここからは、具体的に一つ一つの科目がどんな授業をするかをみていこう!

基礎科目 Fondamental

基礎科目はその名の通り、修士課程の基礎となる科目。科目の数も多く設定されていて、自由に選択することができました。

完全必修の「視覚文化論」に合わせて、「近代美術史」と「現代美術史」のどちらか1つ、「社会の中の美術」「ジェンダーと美術」「現代建築史」「現代写真史」のうちから2つを選択して合計5つの授業を履修します。

  • 視覚文化論 Théorie des cultures visuelles et matérielles

基礎科目、唯一の完全必修科目。どんな生徒も絶対に履修する必要があります。

ブルデューのような社会学的な側面から、アートや広告、ファッションのような「見る」行為を中心に繰り広げられる文化、物質交流などを主に分析していく授業

後半の授業では、実際に美術館で働いている学芸員の方、研究者の方などを招いて、現場での視覚文化の捉えられ方を、経験をもとに学習しました。

この授業は、正直なところそもそも内容が難しいのと、分野が広く出てくる人物が多すぎるので、ほぼ理解はできませんでした。

授業中に出てきた人物、イベントなどの固有名詞をとりあえず聞き取りながら、授業後に自分で調べて授業の内容を埋めていくという作業でなんとかついていきました。

  • 現代美術史 Art contemporain

シンディーシャーマン、ゲルハルトリヒターのような、今現在の現代美術の中で評価されているアーティストを中心に現代美術について分析していく授業。

どちらかというと、一貫した史学を勉強しているというよりも、社会学のようにテーマ別で分野を分けながら講義が進む。

現代美術の作品の中にあるテーマを、「ピエロ」「捧げ物」と言った抽象的な言葉で分類し、分析を進める授業でした。

こちらの授業も毎回のように自分の知らないアーティストが登場するので、授業後の復習が大変でした。しかし、自分が一番勉強したい分野の授業だったので毎回楽しみに受けていました。

  • 現代建築史 Histoire de l’architecture contemporain

現代建築史という名前ですが、授業の内容はほぼ全て、建築家の「ル・コルビュジエ」の人生、作品を中心に展開される授業でした。

私自身が日本で大学生をしている頃にコルビュジエにまつわる授業を履修していたことや、日本唯一のコルビュジェ建築の国立西洋美術館に訪れたことがあり、少しは知識があったので履修することに決めました。

コルビュジエが生きている間に世界大戦が起き彼の建築スタイルに変化が起きたことや、彼の死後の作品の保護活動の歴史を取り上げるなど、建築作品が普遍的に抱える問題に触れることができたのはとても興味深かったです。

  • 現代写真史 Photographie contemporain

ナンゴールディン、オノヨーコのような現代女性写真作家を中心に現代写真を捉える授業。

女性作家を中心に講義するので、フェミニスム、ジェンダー論やクイア理論、インターセクショナリティといった社会学的な用語が頻繁に出てきました。

もともとフェミニスムについて知識がなかった私は、授業についていくのにかなり苦労しました。しかし、写真についてだけ勉強するのではなく、今社会全体で活発に議論されているテーマについて勉強することができたのがとても面白かったです。

基本的に現代美術にまつわる授業を選択するようにしました。自分の勉強したい分野を勉強できて嬉しい反面、現代美術はやっぱり難しい部分も多いから結構大変でした・・。

理論科目 Méthode

理論科目は選択することはできず、1科目のみ。何か実学を教える授業というより、「美術史における学問的アプローチ」や「論文の書き方」を教える授業でした。

  • 研究理論 Formation à la recherche

修士論文をどのように進めるべきかといったテクニックや、美術史の研究に役立つ研究機関、セミナーの紹介などをしていました。

自分は日本で大学を卒業する卒業論文は書きましたが、フランス式の論文の出典の記載方法などについては全く知識がなかったので、修士論文執筆のための知識をつけました。

授業の後半では各生徒が自分の修士論文のテーマを発表するエクスポゼ(プレゼン)があり、みんなでテーマを共有しました。人生初のフランス語でのプレゼンだったのでかなり緊張しました。。。。

横断科目 Transversal

横断科目は、自身の修士論文執筆にあたって使うことができる「必ずしも専門分野に直結するわけではないような分野」の勉強をします。具体的には、デジタルアーカイブのようなインターネット上で使えるサービスの紹介や、外国語の授業。

こちらの授業は、必修で「デジタル技術論」いう授業と、外国語科目として「英語」「ドイツ語」のうち1つを選択します。

  • デジタル技術論 Outil numérique

この授業では、修士論文に使うことができるデジタルアーカイブの紹介や、自分でアーカイブを作る方法といったデジタル技術について広く勉強しました。

情報が断片的であまり整理されていない近代以前の歴史のデータベースを中心に講義が行われたので、あまり自分の役にはたちませんでした。

  • 英語 Anglais

唯一の外国語科目、英語の授業です。

普通に英語を勉強するというわけではなく、あくまで専攻分野である美術史にまつわる英語の語彙を伸ばしたり、美術批評を英語で書くというような授業でした。

日本でも英語を勉強していたので、他の授業よりはある程度簡単だったのが幸いです。しかし、先生の英語が私が勉強していないイギリス英語であったことや、他の学生のフランス訛りがかなりきつかったので、リスニングやスピーキングの授業はかなり大変でした。。

職業科目 Professionnalisation

フランスは日本よりも失業率が高いということもあってか、将来的な就職活動を見据えた科目も設定されていました。

選ぶことができたのは、「美術館学芸員選考演習」と「個別指導」の二つから選ぶことができました。

  • 個別指導 Projet tuteuré

この授業はある一人の教授のもとで行われる授業で内容は毎年変わる授業なようです。

今年は私のかよう大学があるリヨンにある美術館と合同で行われ、最終的に学生たちのみで美術館のガイドを行うというような職業体験的な意味を持つ授業でした。

ガイドのために自分たちで美術館の専門図書室で研究を行ったり、ガイド参加者のことを考えながら動線を考えるなど、実務に近い体験をすることができました。

最終的に私はこのガイドでとある日本人作家について30人ほどの前でプレゼンを行ったのですが、緊張しすぎて記憶がありません。。。

他の学生から後から聞いた話ですが、緊張でかなり変になっていたみたいです。笑

それでも、発表後にフランス人の聴講者の人から「勉強になったよ」「面白かった!」といってもらえて、泣きそうになりました。

修士1年目前期の履修授業を振り返って。

修士1年目の前期の授業を振り返ると、かなり濃密でとても勉強になる時間を過ごすことができたと今では思います。

もともと専門の分野をあらかじめ決めていたので、授業の履修選択をする際も迷うことがなく、すぐに決めることができたのもよかったです。

授業の中にはすでに大学時代に勉強した内容のものもあり、選択するかどうか迷ったものもありました。しかし、今年からフランスで学生を始めた身であり、フランス語にも大きく不安がある状態で授業が始まったので、勉強した内容が被っていてもいいから少しでも単位を取れる可能性が高いものを履修してよかったなと感じています。

修士1年目、前期の授業をふりかって
  • あらかじめ勉強したいことをかなり狭めてきたので履修で迷わなかった。
  • 日本ですでに勉強している内容でも構わないから、とりあえず単位が取れそうなものをとってよかった。
  • 授業によって内容の濃さに違いがあるので、注意が必要だった。

とりあえず、前期はなんとか終了!後期も頑張ります!!