こんにちは。バゲと申します。
フランスの大学院で文系の修士大学院課程に登録し、フランスで生活をしています。
もちろんフランスの学校に登録しているので、授業もフランス語、大学生活もフランス語、もちろんテストもフランス語です。
フランスの到着した直後は、フランス語もうまく喋ることができず、毎日毎日ただただ目の前の課題をこなすことにせいっぱいでした。
さて、今回の記事はフランスの大学のテストについてのお話です。
フランスのテストの形式の一つである、ディセルタシオンについてお話したいと思っています。
フランス式の小論文テストである、ディセルタシオン。フランスに馴染みがない方は耳にしたこともないのではないでしょうか。
フランスの大学に興味がある、フランスに留学中、フランスの大学でテストを受けなければいけないという人に向けて、ディセルタシオンの概要、対策について私の経験をもとに書いています。
フランスに留学に来る予定でない方も、「フランスってこんなテストあるんだなぁ」と思ってもらえる記事になっています。ぜひ最後まで読んでみてください。
ディセルタシオンは、フランス式の小論文テスト
フランス式の小論文であるディセルタシオン。
フランスの高校の卒業試験であるバカロレア試験をはじめに、大学の文系の科目の期末テストでも、このディセルタシオン形式の試験が採用されています。
日本語で「小論文」と訳すことのできるディセルタシオンですが、日本の大学であるような比較的自由にかける小論文とは異なっています。
ディセルタシオンを書く際には、厳密に決められて「構成」と「ルール」を守る必要はあります。
ディセルタシオンの構成
ディセルタシオンの中では、与えられた問題文(文献の引用など)を自分で分析しなおし、自分で問題提起をしなくてはいけません。
この際、問題提起として、明確で、理解がしやすい問題が立てられないと、本文の構成がうまくいかなくなり、点数を獲得することができなくなります。
さらにディセルタシオンでは、本文の中でテーゼ、アンチテーゼ、サンテーゼという形で複数意見を述べる必要があります。
このテーゼ、アンチテーゼ、サンテーゼという形が特殊で、日本人はとても苦労します。
第一パラグラフのテーゼでは自分で立てた問題提起に対して、まず一つの答えを述べます。
しかし、第二パラグラフのアンチテーゼでは、テーゼで立てた論に相反する論を述べなくてはいけません。
そして、第三パラグラフではテーゼとアンチテーゼを統合、昇華した新たな論であるサンテーゼを述べなければいけません。
例えば、学校教育における制服の導入についてのディセルタシオンを書くとしましょう。
テーゼで制服の導入に対しての肯定的な意見、アンチテーゼで否定的な意見を述べます。
その後に、サンテーゼでは「制服の選択的導入、部分導入」、「制服導入の議論がそもそも有用なのか?」、「制服導入の議論から考える学校教育の抜本的な改革」というように、テーゼとアンチテーゼを統合し乗り越えることができるような論を展開できます。
サンテーゼの方法は幅広いので、生徒や教授のスタイルのよって大きく異なります。
ディセルタシオンのルール
- 引用を必ず行う
- 引用の参照を詳細に行う
- 各パラグラフに論拠となる引用、例を1つ以上おく
ディセルタシオンでは、引用、参照が一番重要です。
どんなに小論文で興味深い意見を述べたととしても、論を補強する引用が適切に使用されていなければ、点数を稼ぐことができません。
引用を行う際に、できるだけ正確に「タイトル」「発行年」「筆者」「引用文」を書くことができるかが勝負。
ここでしっかりと引用元を示す頃ができれば、自分がしっかり試験勉強をしてきたという証明になります。
引用元となる情報を頭にたくさん入れることがディセルタシオンの1番の対策になります。
テスト期間になると、フランスの大学生は引用のリストを作り、それを覚えることに奔走します。
ディセルタシオンの書き方
ディセルタシオンで与えられる時間は、2時間の比較的短い時間から、4時間以上に及ぶことも。
この時間をうまくやりくりしながら、ディセルタシオンを書いていくことになります。
ディセルタシオンのテストで使う時間を、準備の時間と実際の執筆に時間に分けて書いて行きます。
特殊な形式のディセルタシオン。正しい形できっちりと書くために、多くの学生は準備に半分の時間、執筆にもう半分の時間を使い、書きます。
ディセルタシオンの準備
- 与えられた命題を読み込む
- 命題を分析し、矛盾点、問題点を探り、問題提起を行う
- 問題提起に合わせ、テーゼ、アンチテーゼ、サンテーゼの構成をきっちり組む
- 各パラグラフに合う引用、参考、例を考える
ディセルタシオンの準備の時間は、与えられた命題と向き合う時間。
命題をしっかり読み込み、自分の中で消化していくことを目指します。
命題を読み込んだら、その命題を詳しく分析して行きます。命題を分析しているうちに、教授たちがどんな答えを待っているかを想像して行きます。
綺麗な形に収まるように問題提起を考え、テーゼ、アンチテーゼ、サンテーゼとそれに当てはまる例を考えて行きます。
ディセルタシオンを書く
命題を読み込み、問題提起を行い、テーゼ、アンチテーゼ、サンテーゼを考えだし、その3つの論にうまく合致する引用、例を見つけることができたら、あとは書いていくのみです。
準備の段階でしっかり論を組んでいれば、スラスラと書くことができます。
逆にディセルタシオンでは、イントロダクションの段階で、本文の内容が確定しているので、途中から論を変更することはできません。
そのため、ディセルタシオンでは準備にかける時間が大切なのです。
日本式の小論文では、ある程度書き始めてから文章の内容を軌道変換することができる。
でも、フランスのディセルタシオンは書き始めたらもう内容は変更できない。準備にかける時間が一番大事なんだ!
実際に私が書いた命題の例
私が実際に書いたディセルタシオンの命題の例を紹介します。
少しでも皆さんの役に立てればと思います。
- 日本のアジア圏における文化的な要塞化
- 西洋現代美術におけるピエロ的表象の方法
- ルコルビュジエの後期キャリア
- フランスにおける文化遺産の考えの成り立ち
- 現代写真の歴史におけるフェニニズム的な分析
- アートと書籍
テーマがかなり曖昧なこともあれば、かなり明確に提示されている場合も。
曖昧な場合は自分の書きたいように書けますが、かなり明確なテーマだと書けることが制限され大変な目に遭います。
ディセルタシオンのアドバイス
最後にこれからディセルタシオンを書くというかたのために、経験者としてのアドバイスを消化したいと思います。
「準備」と「予想」が一番大切
ディセルタシオンは問われるテーマが広い試験といえますが、授業に全く関係ない突拍子もないことは聞かれません。
ディセルタシオンで使うことができる例がいくつも授業中に出てきます。
「授業の中で出てきた例を使いつつ、どんなことをディセルタシオンで書くことができるか」という予想をあらかじめ立ててておくと、試験中パニックになることがなくなります。
授業の中で出てきた文献や引用などを、分類、タグづけし、整理して暗記しておくのをお勧めします。
ある程度情報が整理されていると本文の中の例としてもかなり書きやすくなります。
授業の内容によって、テストを受ける前からディセルタシオンの命題をある程度予想して、山をはって勉強することもありました!
わからない単語、曖昧な定義は、使わない、避ける
曖昧な定義、わからない単語を使うのは避けましょう。
フランスの教師陣は曖昧な定義を極端に嫌います。さまざまな解釈ができる言葉を使う場合は、必ず毎回言葉の定義を確認しなくてはいけません。
例えば、「木」という言葉を使うときも、材料としての「木」である木材を指しているのか、イメージとしての「木」である木の模様、絵柄を指しているのか、曖昧になる場合は、必ず定義するか、より明確な言葉を使います。
さらに、言葉としての意味が広い単語も明確な文脈で使うことができない場合も避けましょう。
例えば、「ナショナリズム」というようなさまざまな捉えられ方をするのではなく、「国民の帰属意識の重要視」「政治的同一性」などのように、より詳しく明確な言葉を使うようにすると、減点のリスクを減らすことができます。
あらかじめ先生に相談する
初めてディセルタシオンを受ける場合や、フランス語に不安がある場合は、必ず先生に相談するようにしましょう。多くの場合何かしらのアドバイスをしてくれます。
外国人学生であるということを鑑みて、辞書の持ち込みなどを許可してくれる場合もあります。辞書があると使いたい単語の明確な定義を確認することができ、私の場合助かりました。
「フランスの大学と日本の大学ってどんなふうに違うの?」と思ったかたは、こちらの日本とフランスの大学の比較記事をご覧ください。