
こんにちは。バゲと申します。
日本の大学で学資課程を修了後、フランスの国立大学で美術史の修士課程をしています。
この記事に辿り着いた方は、フランスの大学への留学を考えている、フランス留学に出発する、フランスに留学に来た、という人が多いでのは。
留学に出発する前は、不安がたくさん。
自分もフランスに留学する前は、フランスの大学での留学生活がなんとなく想像することができず、うまく大学のイメージを持つことができませんでした。
この記事では、そんな「フランスの大学の様子を知りたい」という方に向けて、実際に日本とフランスの大学のどちら経験した筆者が、日本の大学とフランスの大学の違いを紹介します。
フランスの大学の設備から、フランスの大学生の生活まで網羅しています。
最後にはフランス大学に行こうとしている方に向けて、アドバイスを書いているのでぜひゆっくりとご覧ください!
※この記事では、フランスの一般的な総合大学について解説しています。グランゼコールなどの教育機関には必ずしも当てはまらないことがあるので、ご了承ください。
【日本・フランス】大学システム、設備の違い

まずは、フランスの大学のシステムや設備の違いを見ていきましょう!
学士課程(License)は3年、修士課程(Master)は2年。
フランスの学士課程は3年間、修士課程は2年間です。
合計して5年間しかなく、日本に比べると1年間短いです。
また、一般的な大学では学士課程までしか行かない学生はかなり少なく、ほとんどの学生は修士課程まで進学します。
学費が安い
フランスの国立大学は、日本に比べると圧倒的に学費が安いです。
学士、修士、博士課程などの課程により大学の学費(登録料)に幅はありますが、1年間で支払わなければいけない学費は200ユーロから600ユーロほど。
日本円にして3万円から8万円ほどで1年間、大学で勉強することができます。
また、学生の状態(奨学金を受給しているかどうかなど)によっては、そもそも大学の登録料を払わなくてもいいという場合もあります。
!注意点!
昨今の行政改革により、ヨーロッパ以外の学生への学費の値上がりが起きています。
日本人の場合、1年間で学士課程では2770ユーロ、修士課程では3770ユーロ支払わなければいけなくなってしまいました。
この「外国人学生への学費の引き上げ」の改革に反対する大学も有り、ヨーロッパ人学生の学費で海外学生も受け入れ続けている場合もあります。
フランスの大学を選ぶときは、自分の志望する大学の学費についてきちんと調べるようにしましょう。
日本のような入試システムがない
フランスの国立大学は日本のような一括入試形式という形式をとっていません。
基本的に入学する場合は、バカロレア(フランスの高校卒業試験&大学入学試験を兼ね備えたもの)の成績をもとに大学への振り分けが行われます。
大学ごとに試験を設置し、それに合わせて勉強するということもないので、比較的自由は利く状態であると言えます。
※グランゼコールなどの特殊な学校はのぞきます。
高校、大学を卒業してフランスに留学に行く場合はバカロレア試験を持っていないことが多いので、入試ルートが特殊になります。
私の場合は、卒業した大学の卒業証明書、フランス語試験、志望書などの複数の書類を、フランス大使館に提出し、フランスの大学の修士課程への編入を決めました。
くわしくは、私のフランス大学院入学に関する経験を書いた以下の記事をご覧ください。
大学の休みが多い
フランスの大学の休みは、冬休みと夏休みの長期休暇とに加えて、2・3ヶ月に一回、一週間ほどの休みが入ります。
そのため、合計の授業日は日本よりも少なくなり、その分勉強や旅行に時間を使う時こともできます。
私もこの大学の長期休暇を利用して、様々な地域に旅行することができました。
フランスの大学では授業に疲れたと思うタイミングで休みが入るので、気分をリフレッシュすることができます。
インターンシップをしないと卒業できない場合がある
大学のカリキュラムによって、大学の外でインターンシップをしないと卒業できない場合があります。
このインターンシップは、自分が大学で勉強しているものと関係している分野で行う必要があります。
また、基本的にインターンシップは自力で探す必要があるため、外国人留学生である日本人にとってはかなり大変な課題です。
外国人学生など、元々のコネクションがない学生は、現地についてからすぐにインターンシップを探す必要があり、大変です。

私の場合も、インターンシップが義務でした。幸い、現地で知り合った人のコネクションを利用して、インターンシップを見つけることができました。
【日本・フランス】授業の違い

授業1コマが2時間あり、休憩がない、レジュメもない
授業は1コマ、2時間あります。
授業の間も基本的に休憩はなく、2時間ぶっ通しで行われます。
また、日本の大学では教授が授業の内容をまとめたレジュメを用意してくれますが、フランスの場合はレジュメもありません。
ひたすら教授が2時間話しまくり、その話した内容を生徒はノートに取ります。
このノートをもとにテスト勉強を行うというような授業スタイルを取ります。

フランスの授業は一回一回に体力が持っていかれます。なかなか大変です。
多くの学生はノートはパソコンで取る。
多くのフランスの学生はノートをパソコンで取ります。
授業で教えられる情報が多く、大量のノートを取る必要があるため、後から編集しやすいパソコンが好まれている様子。
また、パソコンでノートを取ることで、後から生徒間で共有することができ便利です。

渡仏直後でフランス語の聞き取り能力があまりないときは、他の学生のノートの助けをよく借りていました。
特殊なテストのシステム、ディセルタシオン。
フランスも日本の大学と同じように、学期末にはテスト期間があります。
評価の形式も様々あり、プレゼンテーションや、レポートのように日本でも行う形式の評価もあります。
しかし、フランスの大学の場合、ディセルタシオンと呼ばれる特殊な形式のテストがあります。
日本語で言うと小論文式のテストなのですが、ディセルタシオンには厳格な形式があり、その形式を守らないと評価をうまくしてくれません。
簡単にまとめると、こんな感じ。
- イントロダクション
- 設問の分析
- 問題提起
- パラグラフ説明
- ボディパート
- テーゼ(最初の論)
- アンチテーゼ(テーゼの反対の論)
- サンテーゼ(テーゼとアンチテーゼを統合させる論)
- コンクルージョン
なんのこっちゃ?と思うかもしれませんが、この形式を守ることがまずディセルタシオンの定石。
このルールを守らなければ、テストで点数を取ることができません。

私はフランスに到着してから初めてディデルタシオンの準備を始めました。
最初のテスト期間にギリギリになってしまい、テストの結果も悲惨な形に。。
日本であらかじめ準備しておけばよかったと後悔しています。。
各学年の成績の平均が「半分以上」だったら進級、卒業できる
日本の大学の場合「必修」と呼ばれる単位があり、この単位が認定されないと進級、卒業することができません。
しかし、フランスの場合、「必ず合格しなければいけない」授業はありません。
その代わり、学期が終わった後に、全ての授業の成績の平均が計算され、平均が半分以上(20点中10点以上)とっていれば、進級、卒業できます。
平均の計算には授業により定数がかけられますが、最終的に平均で評価されます。(例:専門に関わる科目は定数が高く重要だが、外国語科目は定数が低く重要でない)
そのため、どこかのテストで失敗しても巻き返すことができるのばフランスの大学の評価システムのメリットです。
【日本・フランス】大学の学生の違い

留年、選考の変更は当たり前。学校に入り直す人も多い
フランスの大学では、留年をしたり鍼灸の途中で選考を変更するということも盛んに行われます。
学部1年生の時に選考した課程が「なんか違うな」と思うと、すぐに選考をかえ新たに学校に入り直します。
そもそも大学の学費が低いこともあってか、一度大学を卒業してからまた入り直すということも積極的に行われています。

私の知り合いの方も、一度大学を途中で辞めてから、また入り直して修士課程をしている人もいます。
学生の出入りが激しいのも、フランスの大学の特徴です。
年齢の幅が広い
フランスの大学の年齢の幅はかなり広いです。
大学の専攻の変更、入り直しが盛んに行われていることもあってか、年齢が広く、多様性があります。

私の登録している修士課程の専攻では、22歳の子から40代後半の方までいらっしゃいます。
授業が終われば即解散。大学は友達作りの場所ではない。
フランスの大学生は、授業と私生活をはっきりと分ける子が多いです。
授業後はすぐに帰宅、図書館に行くなどしている子が多く、授業後におしゃべりに行くということもあまりありません。
また、日本の大学のようなサークル活動もあまりありません。
フランスの大学は、街の中に溶け込むように点在していることが多く、「大学の校舎を出たら、そのまま街!」という場所も多いです。
このような建物の立地も、学生の態度に影響しているのかもしれません。
授業後にはタバコとお酒
フランスの喫煙、飲酒年齢は18歳から。フランスの高校の卒業のタイミングとほとんど同じです。
つまり、大学に入学する頃にはみんな飲酒、喫煙する年齢になっているので、個人の自由でタバコを吸ったり、飲酒をしたりすることができます。
もちろん、校舎内でタバコを蒸したり、宴会をすることはできませんが、基本的には大学生の飲酒、喫煙は問題ありません。
新卒システムがなく、就職のタイミングがバラバラ
フランスは、新卒システムがなく、就職のタイミングが確定していません。
多くの学生は、学生のうちにインターンシップをしてその経験をもとに、大学の卒業後にフルタイムの仕事を探すことになります。
そのような事情があるからこそ、卒業するためにインターンシップを行う必要があるのかもしれません。
フランスの大学に留学する人へのアドバイス

フランス語の『書く』『聞く』を、とにかく鍛えておく
この記事を読んでいる人は、フランスの大学に興味がある人で、すでにフランス語をある程度勉強していると思います。
私もその一人で、フランスの大学に入学する前にDELFB2という資格を所有していました。
フランスの大学では、とにかく聞き取る力と書く力が必要になります。
聞く力がなければ、授業中の「圧倒的な量の教授の話」を書き取り、まとめることができません。
書く力がなければ、テストで課されるディセルタシオンをこなすことができず、テストに合格することができません。
日本の家族、友人にあらかじめ詳しく、計画を話しておく
言わずもがなのことですが、フランスに出発する前に、日本に残っている家族、友達によく計画を話しておきましょう。
留学中、思わぬことで日本にいる人に助けを求める必要が出てくる可能性があります。
例えば、こんなことで日本に住んでいる人の助けが必要になることも。
- 日本の行政文書が必要になる
- 日本においてきた荷物を送って欲しい
- 日本で情報を調べてほしい
- etc

フランス滞在中、日本にいる家族に衣服を送ってもらったことがありました。
日本の家族に「国際郵便」の詳しいやり方を説明していなかったため、うまく郵便を送ることができず、迷惑をかけてしまいました。
論文のテーマを出発前にある程度決めておく(修士課程の場合)
修士課程などで、論文を書くことが確定している場合は、あらかじめある程度、論文のテーマを決めておきましょう。
留学中は忙しく論文の内容を1から考える時間はなく、教授と相談する時間もあまり取れません。
加えて、日本に関係するテーマで論文を書く場合、日本の本が必要になります。日本の本をフランスから取り寄せることは難しいです。
修士論文をスムーズに進めるために、日本にいる段階であらかじめテーマを絞っておき、必要な文献を持ってくるようにしましょう。
(できれば)現地の日本人にコンタクトをとる
留学先にすでに日本人が住んでいる場合、あらかじめコンタクトをとっておきましょう。
現地で一人でも日本語でコミュニケーションを取ることができる人がいると安心です。ただでさえストレスフルな留学生活なので、相談に乗ってくれる人が必要です。
また、フランスにすでに長く住んでいる人と知り合っておければ、現地での生活をスムーズに進めることができます。
Twitterやインスタグラムで「フランス 留学 ○○(都市名)」などで調べると、すでに現地にいる留学生を調べることができます。

「せっかくフランスにいるんだから、日本人とは関わらない!!」という気持ちもわかりますが、ほんの少しでも日本人コミュニティに参加しておくと気持ちが楽になりますよ!
【超重要】留学の荷物をきっちり準備しておく
留学中にいるものといらないものをきちんとリストにして、持ち物の整理をしましょう。
フランスで手に入らないものを持ってき忘れてしまうと、大変なことになります。
意外とフランスで手に入らないのものは、こんな感じ。
- カイロ
- 葛根湯などの漢方薬
- 化粧水などの化粧品
- 酵素洗顔などの特殊な洗顔料
- etc

日本の電化製品は電圧の違いで使えない場合が多いです。
ドライヤー、シェーバーなどは、電圧の変化に対応しているものを持っていくか、フランス現地で帰るものを持っていきましょう。
こちらの記事で、フランス留学の持ち物をまとめているので、ぜひご覧ください!
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