【書評】『めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード』現代アートがわかる一冊

  • 現代アートの動向と作家をざっくり知りたいなあ。
  • 名前だけは知ってるんだけど、あの作家ってこんな作品作ってるんだ!
  • 展覧会で見たあの作家ってどんな作家?

渋谷にある岡本太郎の巨大な絵画や、最近ニュースでよく耳にするバンクシーなど、意外と自分たちの身の回りには現代美術が溢れています。

都心部に住んでいる方は、パブリックアートとして公園や駅の近くにあるアート作品を目にするくとも多いのではないでしょうか。

でも、現代アートってなんとなくわかりづらかったり、前提となる知識がないと馴染みがなかったりするので、理解できているようで理解できていないような気分になってしまいますよね。

実際、私も美術史を勉強している身ではありますが、現代アートについてきちんとした理解はできていませんでした。(今も不安ですけど。。)

そこで、今回は『めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード』という本を紹介しようと思います。

この本は、ごくごく簡単に説明すると、

  • 現代アートのアーティスト40人
  • 現代アートを理解するキーワード38個

を、コラムを含めながら紹介している本です。

「現代アートってどんな感じになってるの?」という疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

なお、この記事では以下より簡略化のため『めくるめく現代アート』という表記をさせていただきます。

この記事を書いた人

フランス語と英語と日本語を話します。美術史を勉強しています。

詳しくはこちらの自己紹介の記事をどうぞ。

『めくるめく現代アート』を読んでわかること

いざ、きらめく現代アートの宇宙へ

難しい現代アートをやわらかく。押さえておきたい基礎知識から最新の動向までこれ一冊でよくわかる!

引用:『めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード』帯より

『めくるめく現代アート』は、現代アートを理解する上で押さえておきたい、現代アート作家やキーワードを広く押さえている解説書です。

実際の作家の作品をイラストで紹介していたり、作家の言葉を引用していたり、各文の説明を簡潔に説明していたりするので、カジュアルに読み進められます。

美術書というと、専門用語がびっしりと出てくきたりするものが多いので、『めくるめく現代アート』はかなり読みやすい部類に入ると思います。

発売日は2016年と比較的新しいので、現代アートを理解するのにはうってつけでしょう。

筆者は現代美術史、装飾史を専門とし、研究の他にもイラスト執筆、デザイン提供を行っている菜奈子さんです。


現代アートの重要な作家がわかる。

この作家、聞いたことある!

『めくるめく現代アート』で取り上げられている作家は、デュシャンから、オノヨーコ、村上隆、バンクシーなど、現代アート作家の中でも知名度が高いことに加えて、重要な作家であるとされる人ばかり。

実際に取り上げられている作家
  • マルセル・デュシャン
  • イヴ・クライン
  • 岡本太郎
  • ダミアン・ハースト
  • 草間彌生
  • etc

一度は聞いたことある作家ばかりだ!

とはいえ、いくら有名な作家でもその一人一人の作品や特徴をきちんと掴んでいる自信のある方は少ないのではないでしょうか。

よく美術館の展覧会に足を運ぶ人はより、「この人名前だけは知ってるんだけど、どんな人かまでは知らないな」と感じている人も多いはず。

そんな「知ってるんだけど、あんまり理解できていないなあ」という場合には、各作家の作品のイラストともに、解説してくれるので、理解が深まります。

筆者

私はこの本を読むことで、

「名前だけはしてるけど、どんな人かは知らない」⇨「どんな人か知ってる」

に、変わりました。

えっ。この人の作品、考え方面白い。

もちろん40人もの現代作家を紹介しているので、中には聞いたことのない作家も紹介されているでしょう。

中には「え!この人の作品、おもしろい!」と感じるものもあると思います。むしろ、今まで知らなかった作家の作品に触れるのってすっごい楽しいです。

そんな今までになった出会いをすることができるのは、作家を網羅的に紹介しているこの本の良さだと思います。

「本で面白そうな作家を見つける⇨展覧会や図録を見てみる」

という流れになれると、現代アートがより楽しいものになります!

現代アートの重要なキーワードがわかる。

あの言葉ってこういう意味だったんだ!

現代アートって普段の生活では全く聞かない言葉もよく出てきます。

でも、展覧会のキャプションではそれらの専門用語は「基礎知識ですよね?」と言わんばかりに頻発して出てきます。

一回聞いただけでは「?」な現代美術用語
  • もの派
  • 抽象表現主義
  • ミニマル・アート
  • etc

そんなわかりづらい現代美術用語も、きちんと解説してくれているのも、ありがたいポイント。

実際に作品、作家を知っていたり、用語を知っていても、その言葉の奥にある意味合いや語源、そこからの派生までを全てきちんと理解するのは、難しいですよね。

この書籍では、専門用語も実例とともに解説しているので、わかりやすく、かつ専門的に学習することができます。

美術の用語って難しいものが多いから、軽くサラッと説明してくれると助かるね!

美術と社会との関わりって意外と深いんだなぁ。

『めくるめく現代アート』は、もちろん美術に関する専門用語も登場しますが、それだけでなく社会一般的に使われている用語も登場します。

私たちが普段使っている言葉も、美術の世界ではまた違った捉え方をされていたり、ある種の「方法」として用いられていることがわかるもの、この本を読んでよかったと思う点です。

え!これも現代美術を理解するキーワードなんだ!
  • フェミニズム・ジェンダー
  • 多文化主義
  • 拡張現実
  • etc

普段よく耳にしたり、他の分野で使われるような言葉が美術でも登場することも。

社会の動向に機敏に反応する美術分野だからこそ、これらの言葉が独自の文脈で捉えられているのが面白いです。

『めくるめく現代アート』がオススメの人

  • 現代美術のちょっとした辞書が欲しい人
  • 現代美術の大まかな動向を知りたい人
  • 現代美術作家を大体理解したい人
  • 美術が好きな人

先ほど述べた通り、『めくるめく現代アート』は大まかにいうと現代美術作家40人と現代美術を理解するためのキーワード38個を解説している書籍です。

そのため、この一冊を読めば、ある程度の現代美術を理解するための基礎を気づくことができると思います。

例えば、現代美術館に行った時に

  • 「本でよんだことがある人の作品だ!」
  • 「この言葉は確かこういう意味だったよね。」
  • 「この作品はあのキーワードを使って理解すればいいんだな。ふむふむ」

という理解をすることができます。

現代美術を見に行くときのハンドブックとしても使えるね!

『めくるめく現代アート』をオススメしない人

  • 特定の作家、キーワードを深く知りたい人
  • 美術に関しての知識が「全く」ない人
  • 現代美術にすでに詳しい人

『めくるめく現代アート』は、さまざまな時代、場所、背景、要素の作家やキーワードを広く扱っている書物なので、一つ一つの作家、キーワードに割くページ数が決して多くありません。

そのため「この作家について知りたい!」「このキーワードって詳しくどういうことなの?」というような疑問を持っている方にはオススメできません。

特定の作家、キーワードを知りたい方は、それぞれ専門書を購入した方がいいかもしれません。

『めくるめく現代アート』のコラムの中には「現代アート 読むと広がる10冊」という他の書籍を紹介するコラムもあります。①『めくるめく現代アート』で現代美術の動向を確認し、②紹介されている書籍に移るという学習方法もいいかもしれません!

また、現代美術の作家、キーワードの解説を行っている書物なので、「現代美術を全っっっく知らない。作家の名前すら聞いたことがない」という方も、この本を読んでも満足できないかも。

現代美術に触れたことがない方は、まずは美術館に足を運んでみることをお勧めします。

まず、どんな美術館、展覧会に行けばいいのかな?

という方には、「artscape」というサイトがお勧めです。

展覧会を場所や興味に応じて検索することができるのでとても便利です。

『めくるめく現代アート』を読んで感じたこと。私の感想。

現代美術は意外と理解しやすい部分もあるんだなと感じました。やはり、人間が作るものである以上、人間の感情的なもの、情緒的なものを取り上げている作品も多く、現代美術をより身近な喪庵であると感じることができました。

一方、現代美術の中にはやはりまだまだ理解するのが難しく、もっと本を読んだり、直接作品を見ることでしか感じる必要があるなと感じることもありました

単純に私はまだまだ美術の理解が足りていいなく、もっと真剣に取り組まなくちゃなと考えるきっかけになりました。

まとめ

『めくるめく現代アート』は、現代アートを理解する上で重要な作家とキーワードをまとめた書籍です。

「現代アートを勉強してみたい!」「現代アートを理解するヒントが欲しい!」と思っている方にはぴったりの本だと思います。

ぜひ、『めくりめく現代アート』を手にとって、現代美術館、現代美術の展覧会に足を運んでみてください!

より一層、現代アートを楽しめると思いますよ!


筆者の筧さんは他にも以下のような書籍を執筆されています。




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